パイプオルガン- Pipe Organ-
2021 年秋「天満教会のパイプオルガン」は、築 92 年の歴史的建築物の礼拝堂にガルニエ社によって新たに建造されました。オルガンの形を左右対称(シンメトリー)とせず、礼拝堂のアーチに合わせた、斬新なフォルムとなっています。 設置場所での音作りを大切にされるガルニエ社の意向で、完成前の約 2 ヵ月間は礼拝堂での整音・調律作業に充てられました。賛美にふさわしい響きは、多くの方々に深い感銘を与えています。
In the fall of 2021, the “Temma Church Pipe Organ” was newly built by Garnier in the 92-year-old historic chapel. The shape of the organ is not symmetrical, and the novel form matches the arch of the building.
With the intention of Garnier, which values the sound creation at the installation site, about two months before completion was devoted to sound conditioning and tuning work in the chapel. The sound that deserves praise has impressed many people deeply.
製 作:ガルニエ オルガヌム 有限会社 オルガン アドバイザー:土橋 薫(オルガニスト)
設置の経緯
1976年 4月 | 「パイプオルガンを購入することはその時期を待たねばならぬ」 一設置の検討を行った壺井正夫牧師の記載(第九十七回定期総会育料)から一 |
2012年 7月 | 教会堂の保存・改修大規模工事実施 |
2017年 7月 | 春名康範牧師より役員会で設置提案 (2019年1月創立140周年記念事業の一環として) |
2018年 3月 | 改めて役員会で設置の提案 検討を進めることとなる |
4月 | 役員会の決議を受けて「パイプオルガン検討委員会」を発足 (後に「オルガン委員会」に名称変更) 設置の要不要から検討を始める |
6月 | オルガニストの土橋薫先生をアドバイザーとして招聘 オルガンビルダーの候補を検討開始 |
11月 | ガルニエ社より提案書を受領 |
2019年 1月 | ガルニエ社案をベースとした設置を役員会で可決 |
2月 | 2回にわたる全体協議会で教会員の意見交換 |
3月 | 総会決議で設置案を可決 ガルニエ社と契約 |
7月 | 床面補強工事(設計•監理 石田忠範建築研究所) |
2021年 7月 | 壁面補強工事(同) |
8月 | 天满教会礼拝堂に器材搬入 |
11月 | 完成 パイプオルガン奉献礼拝 |
2022年10月 | パイプオルガン奉献コンサート |
仕 様
手鍵盤 2:音域 C – f ”’ (54鍵)
足鍵盤 1:音域 C – f ‘ (30鍵)
17 ストップ
パイプ : 1,038 本
重 量 : 約4200kg
サイズ : 高さ 5129 (5111) mm, 幅 3855(3888)mm, 奥行 2385(2444)mm
圧 力: Hw 73 mm Kw 66 mm Pw 71 mm
バロックプログレッシフ調律法 GARNIER N°16 , ピッチ A=442 Hz/25°C
トラッカー: 自動調整
マニュアルカプラー Kw/Hw, ペダルカプラー I / P, ペダルカプラー II / P, トレモロ Hw,
ツィンベルシュテルン
HAUPTWERK (ハウプトヴェルク) 6 ストップ
Prästant 8′
Spitzpfeife 8′ (C – H は閉管パイプ)
Octav 4′
Quint 3′
Superoctav 2′
Mixtur 1’1/3
KLEINWERK (クラインヴェルク) 7 ストップ
Gedackt 8′
Salicional 8′ (C ‒ E は正面パイプ)
Kleinflöte 4′
Waldflöte 2′
Sexquialter 2 f
Quintlein 1’1/3
Dulcian 8′
PEDAL (ペダル) 4 ストップ
Subbaß 16′
Baß 8′
Octav 4′
Posaune 16′
メッセージ
パイプオルガンパンフレットによせて
天満教会のパイプオルガンが指し示すもの
天満教会牧師 小西 望
「このことは後の世代のために書き記されるべきです。
新たに創造される民は主を賛美するでしょう。」
詩編 102編19節
2021年11月、1929年献堂の教会堂に92年を経てパイプオルガンが完成、奉献されました。欧米の古い教会で通例パイプオルガンは、教会堂と一体のものとして設計・設置され、歴史を通して用いられてきました。ですから天満教会の場合、歴史ある教会堂に調和すべく建造された新しいオルガンという点に、大きな特徴があります。そのことは土橋薫アドバイザーも記しておられるところであり、また建造にあたられたガルニエ社の皆さんが最も銘記してくださったことでした。
それゆえ、このオルガンは <調和> の大切さ・豊かさをメッセージとして発しています。備えられた1038本のパイプと17のストップから発せられる音色は深く広く調和して、心を打ちます。そしてこのオルガンは礼拝での賛美の器という大切な役割を担っています。その音色と共に、私たちの祈り・賛美が結ばれ調和して神の栄光をほめたたえるべく誘っています。また教会は、このオルガンがここ大阪の文化的財産となって欲しいと願っています。
混沌とした世界に主なる神は「光あれ」との創造の業をもって調和をもたらし、世界と生けるものが喜ばしく和らぎつつ生きるために自ら主イエス・キリストとしておいでになりました。そして必ずや、希望の完成をもたらすと約束をしてくださいました。
私たちはこのオルガンの音色に支えられて、この主の恵みと希室を仰いで賛美しつつ、与えられた今を歩みます。そうした賛美を次代へと受け継いでいきます。
パイプオルガン奉献に至った主なる神さまの大いなる恵みと導きに感謝し、それに応えた教会みんなの決断を喜びます。的確な助言と支えをくださった土橋薫アドバイザー、技術と熱意を情しまず注いで建造くださったガルニエ社の皆さんに感謝し、喜びを分かち合います。
このオルガンの音色に接する皆さんが、そこに指し示される<調和>の大切さ・豊かさを心に刻んでくださいますように。
天満教会のオルガン建造によせて
GARNIER Organum 有限会社 代表取締役 ガルニエ ボリス
2018年より天満教会の方と礼拝について、オルガニストの方々にはより音楽性についてお話を伺ってきました。話し合いを元に天満教会のオルガンは礼拝の音楽の道具となる事、バッハを中心とした18世紀のバロック音楽に特化している事そして、演奏者のメッセージを伝える事ができるオルガンである事をコンセプトとして製作してきました。オルガン建造には、音響、音楽、礼拝、製図、構造、外観美、木材、金属、革技術、建築等、多くの規則が尊重し合い、全体として調和させる事が最も難しい部分でありました。しかし、この調和が最大の特色の一つであり、オルガンの大きさやストップ数、ストップの種類すべてに意味を持っています。コンサートオルガンの場合は、オルガンから離れた場所に座り「受動的」に音楽を楽しみます。対照的に礼拝では、オルガンは音楽と共に賛美され、メンバーが一緒になって大きな力を持つ「能動的」な祈りで構成されています。その為には、音楽の祈りを導くために存在するオルガンの音をどこに居てもただ聴こえるだけではなく良く聴く事ができるという必要性があります。こうした理由から、オルガンの整音は教会で行い、1本1本のパイプの音の強弱、音色、コントラストの最適なバランスを探しながら約8週間かけてこの音を作りあげました。合計製作時間約11,000時間のうち2,000時間以上は天満教会での作業であり、このオルガンが息を吹き込まれた場所も天満教会です。このオルガンは必要なメンテナンスがあれば何十年、数百年と寿命があり、世代から世代へ受け継がれていくものです。遺産という意味でも、このオルガンが地域の方や教区の結束を高め、音楽を通して会衆が交わり結びつける道具となることを願っています。組立時は教会の方の親切で明るい人柄のお陰で毎日元気に作業ができました。このオルガンに関わってくださった皆様に心から感謝申し上げます。ガルニエ・オルガヌム工房で心を込めて製作したこのオルガンが、皆様の期待に応え、末永く音楽のために役立つこと、皆様に神様の豊かな祝福があります様にお祈り申し上げます。
ガルニエ ポリス(コンセプト・製図・製作・組立・整音)
ガルニエ マテュー(製作・組立・調律)
ガルニエ イヴォ(コンセプト・製図)
ガルニエ マルク(コンタクト・音楽)
ガルニエ エリザベト(音楽)
ガルニエ 満里子(コンタクト・製作・組立)
ガルニエ ロザリー(製作)
水野 真理子(コンタクト・音楽)
中山 航介(製作・組立)
渡邊 淳三郎(製作・組立) 上杉 直人(製作・組立)
ルイズ ロジェ(製作) 伊藤 邦夫(製作)
渡邊 望早(製作) 志餐 誠司(製作)
天満教会のオルガン・アドバイザーとしての願い
オルガニスト 土橋 薫
天満教会に素晴らしいオルガンが誕生しましたが、そこにアドバイザーとして参加できたことを、心より嬉しく思っています。
天満教会より、パイプオルガンの設置を考えたいのでオルガン・アドバイザーとして協力してほしい、とのお声がけを頂いた時にまず思ったのは、大阪に礼拝音楽のための真の楽器が一つ増える、という喜びでした。
この天満教会にオルガンを入れるとしたらどのようなオルガンがよいか、という問いには、もちろん予算と納期も大事ですが、どこかと同じような楽器ではなく、個性豊かな楽器がよいと考えました。また、機械的な要素が多い楽器よりも、人間の息遣いを伝えることができる楽器がよいと思いました。
最初に伺っていた予算では、もっと小規模のオルガンを考えていました。その中で礼拝讃美を支えられるオルガンとして、まず思い浮かんだのがこのガル二工社でした。天満教会の会堂とわたしの所属する島之内教会の会堂は、同じ設計者の中村鎮氏によるもので、ほぼ同じくらいの広さ、よく似た構造と雰囲気を持っています。島之内教会には、ガルニエ社のポジティフオルガン(小型のパイプオルガン)があり、たった3つのストップですがしっかりとした音色で礼拝を支えています。もちろん手健盤1段のみなので、演奏できる作品は限られますが、鍵盤のタッチやパイプの発音は、様々な音楽表現にこたえてくれます。天満教会の礼拝出席者は島之内教会より多いとしても、ガルニエ社であれば、2段鍵盤とペダルを持つ小型オルガンで、礼拝にふさわしい響きのオルガンを造っていただけるだろうと考えました。
実際にそれぞれのストップが個性を持ちながらお互いに調和し、豊かに歌う楽器ができあがりました。またオルガン・ケースも伝統的なスタイルを保ちながら、会堂のスペースに合わせた非対称のデザインとなりましたが、まるで当初からこの会堂に建てられていたかのように違和感なく調和しています。
このオルガンが、天満教会の礼拝の充実はもちろんのこと、大阪における教会音楽やオルガン音楽の発展につながることを期待しています。
奉献礼拝リーフレットによせて(2021.11.28)
栄光と平和のためにお用いください
天満教会牧師 小西望
いよいよパイプオルガンの奉献の時を迎えました。そこには、 主なる神さまの大いなる恵みと導きがあり、別項「経緯」に記されているように多くの方々の祈りと尽力があり、教会みんなの決断がありました。楽器は山梨の工房で製作が開始され、この8月に礼拝堂内で組立開始、11月に整音・調律が完了しました。献堂92年を経た歴史ある礼拝堂にふさわしい佇まいと響きを実現すべく、ガルニエ社の皆さんは技術と熱意を惜しまず注いでくださいました。いま、主なる神さまと皆さまに感謝し、喜びを分かち合います。
「奉献」とは、ご用に用いて頂くべく主なる神さまに捧げることです。ヨハネ福音書には、かめに水を汲み続けた召し使いと(2章)5つのパンと2匹の魚のお弁当を捧げた少年の(6章)お話があります。これらを主イエスは祝して、喜びのぶどう酒に変え、五千人を満腹させられました。主イエスは私たちの捧げものも用いられ、そのみ旨とみ業とで大きな喜びへと導いてくださいます。私たちはこの楽器も主に豊かにとり用いられ、ここ大阪の地にご栄光と平和が豊かに顕わされますよう祈りつつ、奉献をいたします。
祝パイプオルガン奉献
天満教会前牧師 春名康範
パイプオルガンが天満教会の礼拝堂に設置されたと聞き、礼拝が一層力強くなることを祈念しお祝い申し上げます。
新潟教会にはドイツ製の電子オルガンが設置されていました。優れものでバイブオルガンの空気を切る音までプログラムされていました。しかし、関西に帰って神戸女学院と仁川教会のパイプオルガンで礼拝するようになり、AIの音と本物のパイプオルガンの音に大きな違いを感じました。
天満教会は素晴らしい聖歌隊と会衆によって讃美が捧げられパイプオルガンでなくても十分だと思いましたが、優れた奏楽者も多くおられるし、天満教会の基本金を捧げてくださった方が、「天満教会にパイプオルガンを」と言っておられたと聞いて、設置に向けて動き出しました。
「コロナで会堂に集まることが出来ない」に始まり、欠席に慣れたという人もおられるかも知れませんが、パイプオルガン設置を機会に集まり、讃美を捧げ、共に祈り、交わる天満教会が増々成長することを祈っています。
感謝状
パイプオルガンの正式引き渡しの時(2021.12.12)に、ガルニエ社へ贈った感謝状です。
感謝状
GARNIER Organum 有限会社 様
天満教会がパイプオルガンを設置をするにあたり、願いがありました。
その音と外観によって、人々の心を一つに結び、神の栄光を賛美する道具であって欲しいという願いです。礼拝を豊かに導いてくれる楽器であって欲しいという願いです。また、次世代への信仰の継承を支えてくれる楽器である願いです。主にある天満教会の更なる発展を支え続け、地域の文化的財産にもなる楽器であって欲しいという願いです。
貴社は、その願いが叶うように、妥協をゆるさず、技術・努力・時間を惜しまず注ぎ、情熱を注いでくださいました。 オルガン単独でのシンメトリーではなく、建物のシンメトリーを優先した独創的なフォルムを提案いただきました。結果、斬新でありつつ献堂92年を経た教会堂とも馴染んでいる、まるで昔からあるような違和感のない印象を私たちは受けました。パイプの配置などの音作りが難しくなるにもかかわらず、それを可能とするだけの裏付けとなる技術、パイプオルガン製作に長年取り組んでこられた自負心があってこそと感謝しております。
天満教会の賛美にふさわしい響きを追い求め、実現してくださいました。このことのため、礼拝の様子・人数・残響等も丹念に確認してくださいました。様々な賛美歌が歌いやすくなる平均律と、純正律に近い心に響く音との、最適で最高のバランスを追い求め、天満教会の礼拝堂で実に2カ月以上の歳月をかけ、取り組んでくださいました。 パイプオルガンへの願いがかなうように、最高の形で製作され、これからの私たちの歩みに託してくださったことに、心から感謝の意を表し、ここに感謝状をお贈りいたします。
2021年12月12日 日本基督教団 天満教会 教会員一同
礼拝堂に輝く星ーツィンベルシュテルンについて
星を意味するシュテルンは礼拝堂の正面、中央近くの高いところで輝いています。星とパイプの奥の見えないところに、右側の写真の6つの小さなベルが備えられ、これが回って音が鳴る仕組みになっています。
パイプオルガン組み立て記録動画
天満教会での作業を撮影していました タイムラプス(コマ送り)動画でご覧ください
タイムラプス ショートバージョン/ 46秒
タイムラプス フルバージョン/ 6分43秒
GARNIER Organum 有限会社による記録動画
ガルニエ オルガヌム -大阪に新しく建造した教会オルガンでのエリザベト・ガルニエによる演奏